手軽軸・商品軸・密着軸|3つの差別化戦略:マーケティング基本の『き』

3つの差別化の軸

差別化は、3つの「軸」で分類されます。耳にされた方も多いでしょう。

  • 手軽軸
  • 商品軸
  • 密着軸

手軽軸・商品軸・密着軸、3つの軸を考えましょう

今回は訴求の組み立て方について考えてみます。

広告などの「訴求」では、主に「競合となる他社・他商品との違いを伝える」ことが基本となります。生活者の価値観が多様化した現代、細かなニーズにもマッチしたものを提供し、自社の商品が「よりマッチしている」と伝え、『消費者に選んでもらう』ためには、まず根本となる『自社(商品)の独自性』をいかに打ち出すか?が重要になっています。

今回ご紹介する3つの軸は、そのような「他社との違い」を分類したものになります。

手軽軸:

  • 早い・安い・近い・便利など、価格やスピードなどによる訴求をおこなう場合
  • 簡単に選びたい・費用を安く抑えたいユーザーに効果的
  • 大量生産・大量販売が前提
  • 価格競争に巻き込まれやすい

例)マクドナルド、コンビニの化粧品、100均ショップ

商品軸:

  • 商品そのものの技術の高さや新規性・独自性などを訴求を行う場合
  • 他にないものを求めるユーザー・最新機種を求めるユーザーに効果的
  • 常に新技術の獲得が必要(他社が同様の商品を出すと「魅力」が薄れる可能性)

例)ダイソン、Apple Watch、東京スカイツリー

密着軸:

  • 顧客対応の良さ・カスタマイズ性などを訴求する場合
  • 「自分にマッチした商品」「必要な情報を教えてくれる」を求めるユーザーに効果的
  • カスタマイズの自由度を増やすほど商品価格が高くなりがち

例)ファミリーレストランのドリンクバー、UTme!(ユニクロのオリジナルTシャツ作成アプリ)、その場で注文を受けてさばいてくれる魚屋さん

近年は「複合型」も。とりまく環境でも差別化できる。

複合型・両方あるからこそ価値が上がる形を考えましょう

ほとんどの商品では、いずれかの軸単独ではなく、複数の軸が組み合わされて訴求が行われています。従来は3つの軸の「いずれかひとつ」に特化し、深堀りすることで相応の効果があったのですが、ユーザーの求める内容が高度化している現代では「複合型」「いずれかに特化+残りも平均点以上」が求められています。

近年商品そのものだけで差別化が難しくなっていますが、「手軽軸:翌日配送など早く手に入ることを訴求」「密着軸:問い合わせに対し詳しく・丁寧に解説することを訴求」など、『とりまく環境』まで広げて考えてみると、他社との違いを見つけることができるのではないでしょうか。

「選ぶポイント」と「自社の強み」の重なりを考えよう

重なりが重要です

訴求内容を組み立てる時、つい自社の目線で、伝えたい内容・自信のある項目を考えてしまいがちですが、ユーザーが求めている項目とズレてしまっていると、結局まったく効果が得られません。逆に情報の発信者・商品の作り手から見て「あって当然」と考えられる機能・特徴でも、情報の受け手・購入者にとっては、案外「良い」「魅力的」と感じるポイントもあります。まずは『自社の強み』の視点をはずし、3つの差別化軸それぞれについて購入の判断基準になるものを書き出してみることからスタートしてみましょう。

さらに、実際にユーザーが商品を購入する時、表示された広告をはじめてクリックしただけで購入に至るものは、ほとんどないのが実際のところです。特に不動産や自動車・家電など比較的価格の高い商品であれば、なおさらそうでしょう。(不動産では検討に1年以上かけることも普通です)購入までのステップごとにユーザーが求める情報や情報は違いますので、訴求をまとめる場合はどのステップにいるユーザーを対象とするのか?も明確にしておきましょう。

例えばスティック型掃除機の場合はこんな感じです。

スティック型掃除機を選ぶポイントの例:

  • 価格
  • 手に入りやすさ
  • 強い吸引力
  • 使用時の音の静かさ
  • 1回の充電で継続して使用できる時間
  • ゴミ捨てのしやすさ
  • 充電に必要な時間
  • 吸入アタッチメントが豊富
  • 口コミサイトの情報が豊富

ユーザーの情報収集行動と情報提供の例:

比較サイト・口コミサイトなどをいくつかチェックしてみた。
⇒ここまで進んだユーザーA ⇒ スティック掃除機の選び方・人気機種についての情報を提供

評判の高いものを中心にオフィシャルサイトなども見てみた。
⇒ここまで進んだユーザーB ⇒ オフィシャルサイトに不足している実際の使用ユーザーの声などを提供

実際に家電量販店に出向き、展示してあった機種を試したり、店舗スタッフにも相談してみた。
⇒ここまで進んだユーザーC ⇒ 自社商品の強みのエビデンス(裏付け)データなどを提供

自社の強み・他社との比較:

次に、項目ごとに「自社の強み」の情報を加えます。この時、簡単に「他社との比較」の視点を入れておくと訴求の軸を構成するのに役立ちます。内容にもよりますが、例えば簡単に三段階くらいで比較してみると良いでしょう。

自社 競合A社 競合B社
手軽軸 価格
手に入りやすさ
商品軸 強い吸引力
使用時の音の静かさ
1回の充電で継続して使用できる時間
ゴミ捨てのしやすさ
充電に必要な時間
密着軸 吸入アタッチメントが豊富
口コミサイトの情報が豊富

「自社」のスティック型掃除機は、「吸引力」「使用時の音」が他社に勝っている場合(表内「◎」)、この特徴を単独で表現するよりも「吸引力が強いのに音が静か」とすることで、より特徴を明確に伝えることができます。「◎」の数は他社の方が自社より多くなっていますが(自社:2つ・競合A社:3つ・競合B社:4つ)、特徴を明確に、ひとことで表現することでユーザーにも伝わりやすくなり、訴求効果を上げることにもつながります。

明確な違いが見つからないときは?

さて、このようにいずれかの軸をベースに訴求をまとめる訳ですが、実際には他社と比較して明確な違いが見つからない・伝えにくい場合も増えています。例えば携帯ショップや自動車ディーラーなど、他でも同じ商品を扱っている場合は、どのように考えればよいのでしょうか。

「ベネフィット」を伝えよう

手に入れることができる未来像(ベネフィット)を伝えましょう

先のスティック型掃除機の例でも、「吸引力が強くて音が静か」という情報そのものではなく、ユーザーは、そのような特徴を持った掃除機を購入することで「寝ている小さな子どもを起こさない」「早朝や遅い時間でも近所に気兼ねなく使える」などといった生活を手にすることができます。訴求をこのような「良い未来像(ベネフィット)」として伝えることで、ユーザーは訴求内容を自分のものとしてイメージしやすくなるため、より伝わりやすく受け止めることができます。さらに「具体的な未来」は他社との差別化も可能になりますので、その意味でも競合他社より強い訴求ができることになります。

コミュニケーション・関係性の大切さ

コミュニケーションすることで「差別化」を強化できます

消費者の好みの多様化が言われて久しいですが、コストなどの問題から「手軽軸」を中心に差別化が行われていることが多いのも事実です(厳密には「手軽軸」と「商品軸・密着軸」との二極化)。

このような中、差別化の手法としてSNSなどの有効活用をする例が増えています。SNSやBLOGなどのオウンドメディアで、顧客(および将来顧客になり得るであろう消費者)とのコミュニケーション・関係性を構築や、購入者へのサンキューレター送付、同梱物、ポイントカードなどの施策も、うまく使うことで「差別化」を行うことができます。これらは「密着軸」の一部とも考えられますが、広告・プロモーションをユーザーとの「一度きりの接点」にしない考え方として、取り組んでみると良いかも知れません。

まとめ:差別化のその先がポイント

今回は差別化のための3つの軸「手軽軸」「商品軸」「密着軸」についてご紹介しました。

広告・プロモーションの観点からは、「差別化」は、できただけでとどまるのではなく、『ユーザー(のニーズ)にマッチしていること』が正しく伝わってこそ意味があるとも言えます。私たちアーバンプロジェクトは、「なぜ差別化するのか?」「『差別化』をどのように活用するのか?」「『差別化(した内容)』がどのようにマッチしていると伝えるのか?」まで考え、より効果的な訴求に取り組んでまいります。ぜひお気軽にお問い合わせください

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