ビジネス理解の具体例|運用型広告の報告会をうまく進めるには?(その2)

前回触れたように、運用型広告の報告会を成功に導くには、事前にクライアント様のビジネスを十分理解し、クライアント様と同じ方向を向くことが大切です。ビジネスの理解は広告・キャンペーンの理解にもつながり、レポートを、単なる過去の振り返りではなく『次の一歩を決める大切なツール』にすることができるのです。

今回は、クライアント様のビジネス理解について、もう少し具体的に書いてみたいと思います。

『その1(前回の投稿)』の振り返り

まず、『その1(前回の投稿)』でお伝えしたことを簡単にまとめましょう。
運用型広告のレポートを有効活用し、有益な報告会を行うポイントは以下の3つです。

  1. 運用型広告のレポートは『表示状況』『クリック』『結果・成果』『費用』の4つの指標が、様々な軸・区分で掲載されている。
  2. 指標は区切ることで比較が可能になる。『区分ごとの比較』『全体と区分の比較』『比率による比較』を使い分けることで、各区分の状況を理解することができる。
  3. 事前にクライアント様と判断基準を共有しておくことで、同じ目線でレポートの判断・良いか悪いかの判断が可能になる。事前にクライアント様のビジネスを理解しておくことが大切。

3つのポイントを理解しておくことで、レポートは『単純な数字の羅列』ではなくなり、報告会を『過去の確認』から『未来への大切なステップのための意識共有の場』にすることも可能になります。

ビジネスを知るとは?

では、改めて『その2』をはじめたいと思います。
今回はのテーマは『どのようにしてクライアント様のビジネスを理解すればよいのか?』です。

ビジネスを知る

『その1』でもお伝えした『クライアント様のビジネスを知る』とは、単にクライアント様のビジネスの業種・業界や、取扱商品について知っていれば良いということではありません。レポートと同じく、クライアント様のビジネスについても、様々な『軸』『区分』で区切り・比較し、深く掘り下げることで、はじめて、クライアント様と近い目線で意識を共有することができます。

順にご説明しましょう。
クライアント様への『ヒアリングシート』となる資料もこちらからダウンロードできますので、合わせてご確認ください。

➡ ビジネス理解のための情報整理シート(クリックでPDFをダウンロード)

『ビジネスをはじめるきっかけ』を知る

『はじめるきっかけ』にはビジネスの根本的な情報が含まれています。

そもそもクライアント様は、なぜこのビジネスを始めることになったのでしょうか?
既存商品への不満や疑問・あこがれなど、ビジネスのスタートには、ビジネスの根本となる情報が含まれています。

ビジネスをはじめる時に目指した『ゴール』と(数値データだけでなく、クライアント様自身の肌感覚としての)現在の進捗状況。ゴールへ進むにあたっての苦労・課題などを理解することが、ビジネス全体をより深くを知ることにもつながります。取扱商品・サービスに共通する『○○(クライアント様企業名)っぽさ』が何か?も、合わせて考えてみると理解が深まると思います。

『対象ユーザー』を知る

◆デモグラ情報は あとから考える

クライアント様のビジネスにおける『ユーザー像』についても考えてみましょう。

ユーザー像についても考えてみましょう。

広告などで訴求を行う場合に使われる『ユーザー目線』というコトバは、当然ですがクライアント様(の目線)ではなく、クライアント様が目指す層・実際に商品・サービスを手に取ってもらっている層(≒現在の顧客・既存ユーザー)の目線ということになります。既存ユーザー層については、『なぜ自社を選んでもらえたのか?』を考えてみることが、『ユーザー像』を深く理解するヒントとなります。

また、ユーザー像を考える時、年齢や性別などの いわゆる『デモグラ情報』を先に決めてしまいがちですが、

  1. まず先に対象ユーザーの『興味・関心』を考える
     ⇒加えて『○○したいから△△に興味がある』のように、興味関心のもととなる『ニーズ・ウォンツ』を考える
  2. 選んだユーザーは、どのような年齢・性別なのか?と年齢・性別をあとで考えてみる(もしくは年齢・性別で『絞り込む』)

という順序で進めることを強くお勧めします。

同じ年齢・性別だからといって興味・関心は必ずしも均一ではありません。その先にある『ニーズ・ウォンツ』も同様です。

思い出してください。
あなたの同級生たちは、あなたが好きな商品に全員同じように、興味があったでしょうか?
同じように欲しいと思っていたでしょうか?

『個性的な商品・サービス』であればある程・『他と違う特徴』を明確にすればする程、年齢や性別ではなく『興味・関心』や、その先にある『ニーズ・ウォンツ』が大切になっていきます。

デモグラ情報を先に決めることは、その範囲外で興味を持つユーザーを除外してしまうことにつながり、結局対象となるユーザーを狭くしてしまうことになってしまうのです。

◆ニーズとウォンツで分類する

ユーザーを『ニーズ』と『ウォンツ』で分類してみましょう。

商品・サービスへのユーザーの興味・関心や、購入への意識について、もう少し考えてみましょう。
商品・サービスの購入フローを考える時、『ニーズ(必要性)』と『ウォンツ(欲求)』を組み合わせ、ユーザーを4つに分類する方法が広く用いられています。両方の『高・低』を組み合わせ、それぞれ『お悩み客』『今すぐ客』『まだまだ客』『そのうち客』と呼ばれています。ニーズとウォンツの両方が高い『今すぐ客』がCVしやすい状態です。

ニーズとウォンツは、少し区別が分かりにくいかも知れません。
『マーケティングの神様』『近代マーケティングの父』などと呼ばれるマーケティング界の第一人者フィリップ・コトラー氏は、

『ニーズとは、人間生活上必要なある充足感が奪われている状態(欠乏状態)のこと』

と表現しています。つまり、

  • おなかがへった(何か食べたい)状態
  • のどが渇いた(何か飲みたい)状態
  • (○○へ)移動したい状態
    など『○○したい状態』『目的』と考えると分かりやすいでしょう。

また、コトラー氏はウォンツについて、

『ウォンツとは、ニーズを満たすための、特定のものが欲しいという欲望のこと』

と語っています。こちらは例えば、

  • 食べ物が必要
  • 飲み水が必要
  • 車が必要
    など『○○が必要』で表すことができる『手段』と考えてみると分かりやすいのではないでしょうか。『ニーズ』より具体性が高く、その分緊急性も高くなっています。

ユーザーは一般に、ニーズ・ウォンツ両方が揃った時、CV(≒購入・問合せ など)に至りやすくなります。
先の例で言えば、おなかが減っていても今は食べ物が必要でない(我慢できる)状態であったり、飲み水が必要でも、今は喉が渇いていない(明日でも良い・急いでいない)状態であれば、CVに至る率はぐっと低くなると考えられますし、おなかの減り具合・のどの渇き具合によってCVしやすさが変わることも分かると思います。

  • おなかがへった状態 + (今)食べ物が必要 ⇒ 食べ物を購入
  • のどが渇いた状態 + (今)飲み水が必要 ⇒ 飲み水を購入
  • 移動したい状態 + (今)車が必要 ⇒ 車を購入

実際にはこれほど単純ではありませんが、『ニーズ(目的)』と『ウォンツ(手段)』が揃ったときCV(≒購入・問合せ など)につながる可能性が高くなる。
と理解しておいてください。

◆必要なメッセージは分類ごとに違う

四つの分類は明確に分かれているのではありませんが、分類ごとに伝えるメッセージを変えることで『今すぐ客(ニーズ・ウォンツ両方が揃ったCVしやすい状態)』となります。
例えば以下のようなアプローチです。

  • そのうち客:いずれ買うかもしれないが、今買わなくても良い状態
    ⇒ 『今』買うメリットを訴求(期間限定キャンペーンなど)
  • お悩み客:買うことを前提に検討しているが具体的な商品選定に至っていない・商品情報を集めている・商品の絞り込みを行っている・どれが良いのか迷っている状態
    ⇒ ユーザーの抱えている課題の解決策を具体的な提示(自分事化・数値や実績を添えて提案)・
    他社との差別化情報を提供(具体的にどの企業のどの商品を比較対象としているか?比較のポイントは何か?も重要)
  • まだまだ客:当面必要ではない(多少興味をもっている)状態
    ⇒ カテゴリーへの興味を深める情報・商品やサービスを手に入れることでかなう未来像(カテゴリー全体の情報・比較検討できる情報)の提供
    ⇒ 『悩み』を提示し、解決案として商品・サービスへの興味を持ってもらう(自分ごと化)

『商品』を知る:商品のポジション

もちろん対象となる商品・サービスについても知っておく必要があります。

どのような住宅が求められているのでしょうか?

◆クライアント様の視点から考える

まず必要なのは、商品のサイズや色などのスペックだけでなく、例えばクライアント様の取り扱い全商品の中でどのような位置づけの商品なのか?なぜ今回その商品を訴求したいのか?その商品を訴求することで何をどうしたいのか(どうなることを想定・期待しているのか)?といった、『商品のポジション』『ゴールへ進むための役割』とでもいうべき部分です。

今までクライアント様のことを知らなかった層へ、新しくアプローチするための『新規顧客開拓戦略商品』なのか、既存ユーザーの買い替え需要を狙った商品なのか?によって、伝える相手や伝えるメッセージなどが変わります。『業界全体』『競合他社商品とクライアント様』『クライアント様の他商品』など、様々な切り口で商品・サービスの『ポジショニング』を考えてみましょう。

◆ユーザーの視点から考える

クライアント様が特定の商品・企業を『競合』と思っていても、ユーザーは まったく視点が違うため、違う企業・違う商品を競合と考えていた…ということは、よくあることです。(ここでは詳しく触れませんが、『ニーズ』や『ウォンツ』に加え、『予算』などで考えると不動産の競合が自動車だったり、まったく違う業界・業種であっても競合関係が成り立つこともあります。)同じ住宅でもユーザーが『戸建て』で選んでいるのか『○○駅周辺』なのか?『間取り』や『価格帯』など、視点・切り口によって『競合』の意味合いは大きく変わります。『クライアント様の目指す層(のユーザー)』だけでなく『実際に反響のあった層(ユーザー)』など、様々な視点で、詳しく考えてみましょう。

その先には人がいる

『その先』には人がいます

『ビジネスを知る』ということは単純ではありません。
複数の項目が複雑に絡み合って成り立っているものであり、順に紐解いていくしかありません。

しかしヒントはあります。『その先には人がいる』ということです。

CV(≒購入・資料請求)して欲しい人(≒情報を伝えたい人・共感してもらえそうな人)はどんな人なのか?を明確にし、その人がどこにいるのか(≒どうすれば接点を持つことができるのか?)を考えること。実際には どんな人に伝わっているのか?を検証することが、遠回りのようですが結局クライアント様と視点を揃え、同じ方向を向くこと・運用型広告の報告会をうまく進めるには?のヒントになるのではないでしょうか?

前述の『ビジネス理解のための情報整理シート』も、そのままクライアント様へ渡して書いてもらうのではなく、自分のコトバ・表現で伝えたり、より伝わる表現でインタビュー形式にしてみるなどのアレンジを加えると、クライアント様自身も気づいていない(言語化できていない)深い部分まで理解・共有することにつながりますので、ぜひご活用ください。

私たちアーバンプロジェクトは、『その先にいる人』の理解を起点に、様々な広告・プロモーションを行っています。
ぜひ一度お問い合わせください。

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