『ペルソナ』って何だ?『ターゲット』との違いは?
『ペルソナ』というコトバを聞いたことがありますか?
では、作ったこと・使ったことはありますか?
『ペルソナ』と『ターゲット』って何が違うのでしょうか?
今回のテーマは、マーケティング・プロモーション・広告などの場面で耳にすることが多い『ペルソナ』について です。混乱しがちな『ターゲットとペルソナ』も、比較して考えてみようと思いますので、気軽に読んでみてください。
目次
ペルソナとは?まずはコトバの定義
Wikipediaによると、『ペルソナ』は
ペルソナ(persona)とは、ユーザー中心設計やマーケティングにおいて、サイト、ブランド、製品を使用する典型的なユーザーを表すために作成された仮想的な人物像のことである
ペルソナ (ユーザーエクスペリエンス) – Wikipedia
と書かれています。
インターネットで検索しても『典型的なユーザー』『仮想的な人物像』という部分がポイントのようですが、抽象的で、何となくよく分からないですね。似たような概念として広告やWebサイト、ブランド、製品などの『ターゲット』という物もありますが、実際に作ったり運用する時、『ペルソナ』と『ターゲット』は、どのように違うのでしょうか?両者の使い分けは、どのようにすれば良いのでしょうか?
ターゲットとペルソナ:違いと事例
ペルソナはターゲットの延長線上に存在しているのではありません。
ターゲットが「実在している『集団』」であるのに対し、ペルソナは、あくまで『個人』であり、実在しなくても良いというのが大きな違いです。
- ターゲット: 集団・実在する全体をセグメントしたもの
- ペルソナ: 個人(像)・実在しているかどうかは関係ない
ペルソナは、『個人(像)』なので、深掘りすることで抱えている『悩み』『希望』などを浮き彫りにすることができます。例えば不動産広告・伴うLP(ランディングページ)のコンテンツ・UI設計を行う場合を考えてみましょう。
- ターゲット:
・30代~40代男性
・○○市在住
・住宅に興味関心がある - ペルソナ:
・年齢:35歳
・居住地:○○市在住(職場△△市△△駅へ電車通勤)
・家族構成:夫婦と3歳の子どもの3人
・住居:現在◆◆駅から徒歩20分の2LDKマンションに居住
・住居に関する悩み(≒引っ越し希望する理由):子どもの荷物も増え手狭になってきた
・引っ越し先の希望(≒選択の判断基準):
(1)家賃(現状◇◇万円)と同程度の出費でもう少し広くなればうれしい…
(2)現在の◆◆駅沿線から離れたくない(通勤・買い物などに便利、環境も満足)
深掘りすることで明確になった『悩み』『希望』への答えとして、商品を伝えるアプローチ(訴求メッセージ・訴求表現)を考えることになります。このようにペルソナを作ることで『悩み』『希望』をあぶりだすことができます。
ペルソナを作ろう:『絞り込み』ではない考え方
次に、ペルソナの作り方について考えてみましょう。
ネットで検索するとペルソナの『サンプル』『設定項目例』がたくさん見つかります。書店でも関連の書籍がたくさん並んでおり、どれを選んだらよいのか迷ってしまう程です。
慣れないうちは、それらに従いやってみるのも良いでしょう。
まったく否定しません。
しかし、設定項目は、案件により必要かどうか・重要さが変わることを理解しなければいけません。
『作り方』を身につけないと、別の案件が始った時に、またマッチするサンプル・設定項目例を探すことになります。
目指すのは、『他人の作ったサンプルを都度探してマネる』のではなく、『自分で案件に応じたペルソナが作れるようにする』方法です。考え方さえ覚えてしまえば、簡単です。
例えば、設定項目として代表的なものは
- 統計的な属性:
年齢 / 性別 / 出身地 / 血液型 / 誕生日 など - パーソナリティ:
性格 / 価値観 / 口癖 / 現在の悩み / 将来の夢 など - ライフスタイル:
普段の生活パターン / 休日の過ごし方 / 消費活動のパターン / 交友関係 / 読んでいる雑誌 など - 自社商品・サービスとの関わり:
認知経路 / 共感する部分 / 購入を妨げる可能性のある項目 / カテゴリーの情報入手経路 / カテゴリーのリテラシー(利用経験・習熟度) など
他にも様々なものが考えられますが、何らかの『必須の項目を埋める』という発想ではなく、まずペルソナを作る目的を振り返ってみましょう。
例えば、先ほどの広告・LPの事例で、ペルソナを、『テレビなどで有名なタレントAさん』とするなら、それで個人が特定でき、関係各所へも十分意識共有(どのようなペルソナなのかの共有・ひいては『課題』の共有)できます。『年齢』『性別』…など個別の項目は『Aさん』という情報に含まれているので、あえて追加して埋めなくても問題はありません。
同様に『アニメの主人公○○』とした場合も、年齢や性別を超えた存在である可能性もあるでしょうし、実在していないですが『個人(人ですらない場合もあり得ます)』としてペルソナとして十分な設定です。
『ターゲット』では、実在している『全体』から、年齢・居住地などで『絞り込み』を行い、対象となる集団の範囲を徐々に狭くしていますが、『ペルソナ』では実在しているかいないかに関わらず『特定のひとり』について語っているため、必要であれば、どんどん詳しく項目を増やすことができます。
- ターゲット
- 全体を属性Aで絞り込む
↓ - 属性Bで絞り込む
↓ - 属性Cで絞り込む
↓ - 属性Dで絞り込む
- 全体を属性Aで絞り込む
- ペルソナ
- 個人を特定する
↓ - 対象となる個人の属性Aをピックアップする(例:その人の年齢は?)
↓ - 対象となる個人の属性Bをピックアップする(例:その人の悩み・希望は?)
↓ - 対象となる個人は、なぜ『悩み』『希望』を持っているの?(悩み・希望の『原因・理由』を明確化)
- 個人を特定する
ペルソナ作りで必要なのは『各項目を埋めること』ではなく、『個人を特定し、人格・生活スタイルを明らかにすること』『なやみ・希望の原因・理由を明確化すること』です。個人を明確に特定・確定することで、属性情報はいくらでも追加できるはずです。広告の訴求メッセージ・クリエイティブ作りに、WebサイトのUI作成のベンチマークとして(伴う関係各所との意識共有に)…目的に応じて必要な項目を『その人の年齢は?』『その人の悩みは?』『その人の希望は?』『それはなぜ?』『それってどういうこと?』…と『ピックアップしていけばよい』のです。(『意識共有』のためには、十分過ぎるくらいやっておくのが良いと思います)
さらなる活用法:やらない手はない使い方
ペルソナはひとりだけ?
ペルソナは『現状分析(による課題抽出)』のために使われることが多いものですが、実際の運用では、幅広い対象に対応するために、『メイン』と『サブ』の複数のペルソナを作ってみるのも良いでしょう。
そう、ペルソナは複数作っても良いのです。
注意点としては、全体の構成を考える上で、2人のペルソナは明確に違う属性であり、違う特徴・違うニーズを持っているハズですから、きちんと強弱をつけ、両者の関係性も考えた上で全体を構成することです。(例:低価格商品を中心に購入する新規ユーザーと、こだわり商品を購入するリピーター ⇒どちらにどのような訴求をするのか?を検討 『両方に向けた訴求』は、どちらにもうまく伝わらない結果になります)
時間軸:未来像・あこがれの姿を考えてみる
さらに、同じく複数のペルソナを使う場合でも、『複数人』ではなく、ひとりの『現在の状況』と『未来像』や『あこがれの姿』を作る方法もあります。
ユーザーが現在抱えている悩みやニーズなどを理解するための『現在のユーザー層の代表としてのペルソナ』と、『そうなりたい姿・あこがれている姿をもとにしたペルソナ』という2種類のペルソナを作り、ビフォー(購入・CV前)・アフター(購入・CV後)の変化の『理由』として商品購入(≒CV)を置くことで両者を『商品購入(≒CV)というストーリー』でつなぐのです。
このようにペルソナは、案件ごとにひとりしか作れない(作ってはいけない)のではありません。それぞれのペルソナが十分機能するためには、全体の中でのポジショニングを踏まえ、設定項目を決めることが必要になります。狭く深い視点と全体を見渡す俯瞰の視点を『行ったり来たり』して、取り組んでみてください。
まとめ:ペルソナをうまく使うには?
ペルソナは作っただけでは何の価値もありません。
そして企業の『買ってもらえる』ことを前提としたペルソナ作りも、同様にまったく意味がありません。
そのようにして作られたペルソナは、結局想定したようには動いてくれませんので、作るのに費やした時間は、まったくムダなもの…ということになってしまいます。
ペルソナ自身がどのようになっていくことが、ペルソナにとって『良い結果』『幸せ』なのか?を十分に考えること。
その変化の過程で、 広告・プロモーション・UI設計…などとどのように関わるのか?を考えることが求められているのではないでしょうか。